どんな背景や過去、属性を持つ人であっても、暮らしやすく、活躍できる社会へ。

 

こうした流れが最近の風潮です。

 

障害者福祉は元々、こうした考え方からスタートしている面がありますが、最近になって特に「ソーシャル・インクルージョン」という言葉が広まりつつあります。

ソーシャル・インクルージョンの理念と歴史

ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)は、最近の日本の福祉や教育、労働施策等の推進や分野間の連携を論じる上で、とても重要なテーマと位置づけられます。

 

さて、そもそもこの言葉の意味はどういうものなのでしょうか?かつて、国レベルで開催された検討会の中において、ソーシャル・インクルージョンは以下のような文脈の中で登場しています。

 社会福祉は、その国に住む人々の社会連帯によって支えられるものであるが、現代社会においては、その社会における人々の「つながり」が社会福祉によって作り出されるということも認識する必要がある。

特に、現代社会においてはコンピューターなどの電子機器の開発・習熟が求められるが、人々の「つながり」の構築を通じて偏見・差別を克服するなど人間の関係性を重視するところに、社会福祉の役割があるものと考える。

今日的な「つながり」の再構築を図り、全ての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う(ソーシャル・インクルージョン)ための社会福祉を模索する必要がある。

 出典:『「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」報告書』厚生省(現・厚生労働省)・2000年

 

また、諸外国に目を移すと、1970年代のヨーロッパにおいて、移民の増加などによる産業構造の変化から長期の失業のために貧困から抜け出せなくなる労働者が多数発生しました。

 

こうした状態がソーシャル・エクスクルージョンと呼ばれていました。ソーシャル・インクルージョンは、このソーシャル・エクスクルージョンの対立概念とされ、貧困などの問題をより広く解決するための理念として位置づけられたものと言われています。

 

ソーシャル・インクルージョンの展開と具体例

ノーマライゼーションが知的障害者の分野から展開し、すべての人の人権保障に広がっているのに対し、ソーシャル・インクルージョンは移民や難民に目を向けることから始まった考え方ということもあるため、一般に社会に受け入れられ難い人たちを意識する傾向が強いものとなっています。

 

たとえば、

・在住外国人や少数民族

・ホームレス等の貧困・低所得者

・一人暮らしの高齢者、未婚の母親等のシングル・ペアレント

・ニート・フリーターを含む非正規雇用者

・刑余者

・LGBT等の性的少数者

・DVや児童虐待の被害者

・引きこもっている人

・希少難病の罹患者

・無国籍・無戸籍の人たち、宗教的少数派

・不登校経験者

・交通遺児、自死遺児、里子

などのノーマライゼーションの議論ではあまり語られなかったマイノリティを意識し、そういった人たちの人権を考えさせる言葉となっています。

 

教育の分野では、インクルージョンという言葉は、障害児教育の分野で用いられ、インテグレーション、メインストリーミングの次の段階とされています。

 

前二者は、障害児と健常児を区別しますが、インクルージョンは障害児・健常児を区別せず、多様な子どもの存在を前提とする考え方となっています。

 

また、ビジネスの分野では、ダイバーシティに代わってインクルージョンという言葉が用いられつつあります。

 

ダイバーシティは、多様な人材を受け入れ生産性を高めるための取り組みですが、インクルージョンは、多様な人たちが対等に参加し自分らしい組織への貢献を感じられるためのマネジメント手法であると言われています。

 

さいごに

これまで見てきたように、ソーシャル・インクルージョンはそもそもが幅広い概念であるため、分野に応じて様々な切り口から語られます。

 

しかし、いずれも最終的には「すべての人との共生」を目的としていることには変わりありません。

 

さいごに、日本最大の社会福祉法人である済生会は、一昨年から以下のような取組みを始めていますので、ご紹介したいと思います。

 

徐々にでもソーシャル・インクルージョンの理念が社会に浸透していくことを感じますね。

 現在、日本は少子高齢化を迎え、さまざまな形で生活困窮者となる人々が増えています。医療・福祉を含めた広い観点から人々を受け入れるソーシャルインクルージョンの考え方は、これからの日本に必要不可欠です。

まだ一般には広く知られていませんが、様々な活動が日本中で少しずつ広がってきています。少しでも多くの人々に活動の内容を知ってもらい、すべての人が共に生きていく未来を創造することが私たちの願いです。

※社会福祉法人恩賜財団済生会HPより

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