昨年は、中央省庁などによる障害者雇用水増し問題が大きな問題として取り上げられました。

 

その後、国は有識者や関係閣僚を交えた会議を開催し、今後の対策を検討してきました。

 

このたび、将来的な法改正を見据えた現時点の方向性が示されましたので、紹介したいと思います。

中央省庁などで障害者の雇用を水増ししていた問題を巡り、政府は18日、厚生労働省が、他省庁や地方自治体など行政機関を調査できる権限を設ける方向で検討に入った。

従来は民間企業のみが対象だった障害者手帳の写しなど雇用に関する書類の保存を行政機関にも義務付ける方針。チェック体制を強め、行政機関での不正の再発防止を目指す。

同日開催された労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に、厚労省が障害者雇用促進法の改正に向けた論点として方向性を示した。今後は分科会での調整を進め、1月下旬から開かれる通常国会に政府が改正案を提出する見通し。

引用元:障害者雇用、行政機関への監視強化 雇用促進法改正へ :日本経済新聞(2019.1.18)

労働政策審議会(労政審)とは?

「労働政策審議会」とは、労働政策に関する重要事項を議論する場であり、厚生労働大臣へ意見を述べる会議として位置づけられているものです。

 

労働関係の法律が改正されるタイミングなどにおいて開催されることもあり、日本の労働政策の動向を把握するためには注目すべき会議です。

 

障害者雇用に加え人材開発や安全衛生などの分科会が存在し、労働現場のルールを議論する上では現場を熟知する労使双方の参加が不可欠であるという考え方から、公益委員に加え労使双方の代表者が委員になっていることも特徴的です。

 

なお、障害者雇用分科会には、当然「障害者の代表」も参加しています。

 

第82回労政審障害者雇用分科会資料より

当該会議にかかる資料は全体で300ページ弱となる膨大な資料となっていますが、その中でも、国が今後の方針を示している部分を主に取り上げて紹介したいと思います。

 

①国・地方公共団体における「障害者活躍推進計画」(仮称)

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 ※第82回労働政策審議会障害者雇用分科会資料より

 

民間企業の障害者雇用に関しては納付金などの各種のルールがある一方で、国や行政機関へのチェックは甘い、という批判が立て続けになされました。

 

こうしたことへの反省も踏まえ、複数年度に渡って計画的に取り組んでいく仕組みを作る流れになりそうです。

 

介護保険や障害者福祉と同様に、行政計画の位置づけになるようでしたら、それぞれの自治体も注視していくべき動きだと思われます。

 

なお、仮称ではありますが「雇用推進」ではなく「活躍推進」としているところなどは、採用時だけでなくその後の職場定着や能力の発揮までを含め、障害者雇用を数だけではなく実質的な労働力として考える、などの想いが見えてきます。

 

当然、先の出来事の反省や、障害者差別解消法の合理的配慮の流れなども踏まえているのではないでしょうか。

 

テレワークやフレックスタイム制などは、画一的な労働形態が前提とされる役所にとってはハードルが高いとも思われますが、それぞれの自治体が試行錯誤しながら実現してもらいたいですね。

 

②週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用に対する支援措置

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※第82回労働政策審議会障害者雇用分科会資料より

 

「具体的な内容」とありますが、方向性としては「給付金の支給」という内容のようですね。

 

要は、短時間労働者(週20時間~30時間)の枠に加え、さらに短時間(週10時間~20時間)の枠を設けるといった案でしょうか。

 

想定されやすそうな内容で、書いてみるとあっさりとしたものですが、財源が関係するものはより詳細な計算が必要となるため、支給額の単価などが具体的に決定されるまでには、大分時間や手間がかかりそうです。

 

③障害者雇用に関する優良な中小企業に対する認定制度

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※第82回労働政策審議会障害者雇用分科会資料より

 

今回の資料の中では、最もその実効性や広がりが不安視されそうな取組です。

 

自治体によっては健康や介護などの様々な分野で認証制度を活用しているところもありますが、当然、成果が出ているところもある一方で、制度の周知や手を挙げる企業・事業所不足で苦労しているところもあります。

 

ただ、おそらく本格的に制度がスタートすれば、国も本気になってキャンペーンを仕掛けていくことになると思いますので、一自治体の規模とは比べものにならないぐらいの広がりを見せる可能性もあります。

 

確かに、客観的な評価項目に基づき、国(の機関)が正式に認証したとなると、企業にとっては非常に名誉なことであり、知名度の向上や優良企業であることの訴求に結び付けることができそうです。

 

また、福祉人材不足が社会問題化している中、このような企業は、人材の獲得競争においても一定の優位性を保つことができそうですね。

 

いずれにしても、障害者と中小企業の双方にとって有益となるような仕組みができ、国におけるその後のフォローも含め、制度が上手く運用されることを期待したいと思います。

 

さいごに

昨今、国会を賑わしていた「働き方改革関連法」や「外国人労働者問題(改正入管法)」なども、今後は具体的な運用フェーズに進むことになり、日本の労働現場の多様化はよりいっそう広がることになります。

 

さらに、今回の資料にあるとおりの方向性が具体化されるに伴い、他の制度との関係性にも議論が及ぶことになるでしょう。

 

障害者にかかわらず、労働者や仕事といったものを数や成果だけで測るのではなく、ノーマライゼーションの考え方を踏まえ、誰しもがお互いの多様性を受け入れながら仕事を行える環境の整備が望まれます。

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